就職活動をする上で、多くの方が職場見学をします。
薬剤師の場合は薬局見学ですが、正しい見学方法を知っている人は少ないです。
「入社してから後悔したくない」
「ブラック薬局を見極めたい!」
「どんな質問をすればいいんだろ?」
「確認するポイントは?」
など分からないことだらけでしょう。
普段、薬局見学する機会はほとんどないため、不安になると思います。
ネットで調べても当たり障りのない、一般的なアドバイスしか書かれていませんよね。
ここでは、何十回も薬局見学に立ち会ってきた、私だからこそ分かる実践的な方法を教えます。
一般的な内容とは違うので、面食らうかもしれません。
しかし、これが多くの現場を経験してみつけた薬局見学時の賢い方法です。
短い時間の見学でも、コツさえつかめば薬局の本質を見抜くことが可能ですよ。
ヤバい薬局に入ってしまったぁ〜!と後悔しないためにもコツを覚えましょう。
具体的には以下の点に気をつけることです。
- 見学先のスタッフの態度にダマされないこと
- シフト表とかかりつけ薬剤師を確認する
- 忙しい時間帯を狙い撃つ
- 整理整頓はそれほど気にしない
私は中小薬局にて9年間、人事を担当して100人以上の薬剤師と面接してきました。
また、私自身も転職の時に薬局見学をしていますし、派遣薬剤師・フリーランス薬剤師として働く中で何度も薬局見学する薬剤師をみてきました。
薬局見学については熟知していますので、必ずあなたのお役に立てると思います。
薬局見学で姿を変える薬剤師たちに注意
薬局見学時のアドバイスに、「どんなスタッフがいるのか?その人間性を確認しましょう」というのがあります。
しかし、現実には薬局見学のような短時間で、スタッフの人間性を知ることなど不可能です。
なぜなら、見学に行った時のスタッフは普段とまったくの別人になることがあるからです。
優しそうな薬剤師だなと思ったのに、パワハラ上司だったり。
大人しそうな人だと思ったら、感情のコントロールができない情緒不安定な薬剤師だったり。
薬局見学でそれを見抜くことなどできません。
これから、私が実際に体験した薬局見学で豹変した薬剤師たちを紹介します。
豹変した理由を知っておくことで、こういうケースもあるのかと心構えができます。
今話している薬剤師の印象は、本当の姿ではないかもと知っているだけで十分です。
薬局見学での勘違い①(管理薬剤師の変貌)
これは私が派遣薬剤師をしていた時の話。
私が派遣に入っていた薬局は、私を含めて3人の薬剤師で業務をしていました。
そこの管理薬剤師はちょっと問題のある人で、人間関係のトラブルメーカーでした。
だからこそ薬剤師が定着せず、人手不足となり派遣薬剤師を頼んでいたのですが。
ある日、転職活動中の薬剤師が薬局見学に来ました。
若い男性で、初めての転職活動中とのこと。
管理薬剤師が今までに見たことのない優しい笑顔で、丁寧親切に案内しています。
男性も嬉しそうに頷きながら聞いています。
はたから見たらとても良い雰囲気ですが、、、
実はこの管理薬剤師、普段は自分の感情をコントロールできない気分屋で周りに当たり散らす困ったちゃん。
今の管理薬剤師は仮の姿で、全くの別人です。
もちろん男性はそのことを見抜くなんて出来ません。短時間で見抜くなんて不可能でしょう。
ではなぜ?この管理薬剤師は豹変したのでしょうか?
私の予想ですが、派遣薬剤師との仕事が嫌だったからだと思います。
彼はとても嫉妬深い性格で高給を得ている私をよく思っていませんでした。
早く派遣の私と交代する薬剤師にきて欲しかったのだと感じました。
みずさんは、そんな変な管理薬剤師とよく平気で働けますね?と疑問に思うかもしれません。
私は高給であれば、変な人間関係の薬局でもまったく苦になりません(笑)
私は人間関係の護身術の達人です。
護身術のコツは、人間関係なんて気にしない。
淡々と仕事をすることですね。
仕事を離れれば、関わり合うことのない人達です。
気にすることはないのです。
薬局見学での勘違い②(世話好き薬剤師の変貌)
次に紹介する豹変薬剤師は、本来は後輩想いで皆から慕われる女性の話。
この女性薬剤師が、見学者が来た時に普段と違った態度を取りました。
薬局を案内していた社長と人事の私に対しての態度が反発的なのです。
普通は、見学者に対してある程度気を使うものですが、その女性薬剤師はまったく気を使いません。
なぜそのような態度になったのでしょうか?
理由は、彼女の「自分よりも立場が上の人間に負けたくない」性格です。
上の人間にはペコペコして、下の人間には横柄にする嫌なタイプの人間とは真逆ですね。
上には負けず、下には優しい薬剤師なので後輩からは人望があり、彼女のいる薬局は安定していてスタッフの定着率は高かったんです。
しかし、彼女の本部に対する横柄な態度が、見学者には意地悪な薬剤師に見えたようです。
当然のことですよね。
結局、その見学に来た薬剤師は入社してくれませんでした。
ただ、もしこの女性薬剤師と働くことになったら、とても働きやすいので転職に成功したと思われます。
本来は良い薬剤師が、悪い印象となってしまった事例です。
ちなみにこの薬剤師は、社長や私と二人きりの時は決して反発的ではありません。
周りにいる後輩たちに、上の人間に反発的な態度をする自分を見せることで、頼もしい人間であることをアピールしているように思えました。
薬局見学の勘違い③(自分の立場を心配した薬剤師)
外部の人間を受け入れることが出来ない、いわゆる器の小さいタイプの薬剤師の話です。
普段この薬剤師は自分のテリトリー(自分の店舗)のスタッフ達ととても仲良くしていました。
仲間意識が強いのでしょう。
しかしその反面、同じ会社でも別の店舗の人たちとは仲良くできない一面がありました。
学生の頃によくいる、グループを作って身内で盛り上がり、自分のグループ以外の人を排除するタイプですね。
この管理薬剤師は女性だったのですが、見学に来た同年代の女性薬剤師をみて目の色が変わりました。
この薬局は忙しくて大変であること、体力がないと難しいこと、自分の希望通りに休みは取れない、など欠点ばかりを説明しました。
私が居ない所だったので、後からそのことを知り、なんで大袈裟に欠点を説明したのかとさすがに注意しましたね。
見学者の薬剤師は、見た目がシュッとしていて感じの良い女性でした。
きっと、スタッフや患者さんに慕われるタイプの薬剤師です。
この豹変薬剤師は、見た目も感じも良い薬剤師が入ってくることで、自分の立ち位置が変わってしまうことを恐れたのだと感じました。
まさに学生感覚の抜けない薬剤師の感情的な態度が見学者にマイナスのイメージを与えてしまったのです。
前述の後輩想いの薬剤師と同じで、もし薬局に入ってしまえば、彼女は仲間として大切にしてくれたはずです。
この例も良い環境に転職できたはずなのに、豹変薬剤師の影響でチャンスを逃したケースです。
薬局見学の勘違い④(見学薬剤師に嫉妬して)
最後に紹介する変貌薬剤師は、見学者に嫉妬して入社を拒んだケースです。
これはパート希望の薬剤師を見学に連れて行った時の話。
この見学者は、小学生のお子さんが2人いました。お子さんが学校に行っている時間だけ、仕事をしたい人です。
薬局見学の時は、見学する人があちこち確認したり質問したりしますよね。
しかし、見学される方も「どんな人なのか?」と見学者の情報を少しでも欲しがります。
それは、もしこの人が入ってきたら、自分にとって得か?損か?を判断するため。
ここでのポイントは現場で働く薬剤師は、会社や薬局のことなんてサラサラ考えていないこと。
とにかく自分が気分良く働けるかどうか。
そこしか見ていません。
だから、見学に来た薬剤師と一緒に働きたいか?働きたくないか?その判断をするために情報収集をします。
今回のパート希望の薬剤師は、見学先の薬剤師から入社して欲しくないと判断されました。
なぜでしょうか?
この時の管理薬剤師は、フルタイムの正社員です。
小学生の子供がいますが、土曜日や休日当番も出勤します。
しかし、見学の薬剤師は子供が学校が休みの時は働かないのが希望です。
そういった就業条件を知り、なんで自分はフルタイムなのに、この薬剤師は短時間勤務なの?
そんな不公平は我慢できない!(←まったく見当はずれな嫉妬)
となった訳です。
人の嫉妬や妬み(ねたみ)は理屈ではありません。
理不尽に嫉妬されて嫌われてしまうことは、よくある話です。
管理薬剤師は家のローンもあり、共働きでしっかり働く必要がありました。
そこへ短時間しか働かない(バリバリ働かなくとも生活に支障のない)自分と同じ年代の薬剤師がくることに、耐えられなかったのです。
そこで「時短でパートでは難しいかなぁ」と嫌そうな顔ではっきりと言ってしまいました。
常識もなにもあったものではありません。
本来であれば、見学者が帰った後に本部と相談するという形を取るでしょう。
しかしこの管理薬剤師は、本人に入社したいと思われたら必ず一緒に働くことになる。
それだったら、今のうちに潰してしまおうと考えたのでしょう。
薬局のことも何も考えない短絡的な考え方で、呆れてしまいますね。
この薬局は非常に忙しい薬局だったので、パートの薬剤師さんが入ればかなり助かったはず。
薬剤師を雇用するのは大変です。
そんな苦労も知らずにこのような態度を取る薬剤師もいます。
この管理薬剤師は、人柄は悪くなかったので入社してしまえば問題なかったはずです。
これも、本来の薬剤師の人柄が正しく伝わらなかった事例です。
まだまだ他にも沢山ありますが、これらの事例からも分かるように、見学時は現場の薬剤師が本来の姿を見せるとは限りません。
むしろ、逆の印象を受けることが多いかもしれない。
このことを知っているだけでも、見学時の薬剤師をそのまま素直に見ることは危険だと分かると思います。
薬剤師の職場見学で必ず確認すること
それでは、薬局見学では何を確認すれば良いのでしょうか?
私は、基本的にはあまり薬局見学は意味が無いと思っています。
見学に行っても、薬剤師が本来の姿を見せるとは限らないし、整理整頓なんて見学の前に掃除をされたら確認できません。
実際、私も自分の会社で見学に連れていく時は、前もって片づけをするように現場に指示を出していました。
また、トイレが綺麗かどうか確認しましょう。みたいな話もありますが、トイレが綺麗でも働きやすさには関係ないですね(笑)
それでは、どんなことに気を付ければ良いのか?次にお話していきます。
自分の素性を明かさない
4人目の変貌薬剤師で話したように、あなたの働き方によって、現場の薬剤師の反応が変化することがあります。
なぜなら、自分のことしか考えていないから。
そんな時は、たいがい理屈の通らない感情的な反応のためマイナスになります。
あなたの働き方が、フルタイム勤務で休みはいつでもOK!
遅番早番は関係ないし、土曜日でも日曜日でも出勤できますよ!というのならしっかりアピールしましょう。
ニコニコで迎えてくれるでしょう!
しかし、制限のある働き方をする場合は、現場の薬剤師がいらぬ心配をして邪魔してくることがあります。
基本的に、どの薬局にどんな薬剤師を入れるのかは本部の判断です。
参考として現場の意見も聞きますが、感情的で理不尽な意見など必要ありません。
薬局見学するときは、自分がパートだとかアルバイトだとかは現場に伝えないで下さいと本部の人間に伝えましょう。
薬局のスタッフには「薬局見学したい薬剤師がいるので、少し顔出します」程度に伝えてもらいます。
もし、どのような働き方をするの?と現場の薬剤師に聞かれても正確に答える必要はありません。
「しっかり働きたいと思っています。いろいろと検討しながら見学させてもらっています。」と笑顔で返事しましょう。
忙しい時間帯を狙い撃ち
見学する時間帯は重要です。
よく、暇な時に見学に行くことで、現場の薬剤師とゆっくり話ができると言います。
また本部の人間も、あまり忙しい現場を見せて薬剤師が嫌にならないように、暇な時間帯に連れていくことがあります。
しかし、一番良いのは最も忙しい時間帯に見学に行くことです。
午前であれば11時頃ですね。
一番忙しい時には、スタッフの本性が出やすい。
バタバタと忙しいと、イライラしたり荒々しい態度を取るスタッフがいます。
あきらかに働きにくいですよね。
バタバタしている時の言葉遣いや表情を、しっかりと観察しましょう。
余裕がなくて、ピリピリしているようだと力量がなく、精神的に不安定で働きにくい環境であると言えます。
逆に表情に余裕があって、患者さんに穏やかに対応できている。
スタッフ間のやり取りもスムーズで威圧感が無ければ、合格です。
整理整頓について
薬局の整理整頓について確認すること。というアドバイスがありますが、あまり気にしなくて良いです。
極端に煩雑でなければ、まったく問題ない。
逆にあまりに綺麗にピシっと整理整頓されている薬局は、どうかと思います。
今まで50以上の薬局で働いてきましたが、神経質に綺麗にしている薬局は事務員さんが厳しくて大変なこともあります。
少しくらい雑の方が、人柄が穏やかで働きやすいスタッフが多い印象がありますね。
シフト表の確認
勤務スケジュールの確認をしましょう。
シフト表を見せてもらい、どのような働き方をするのか確認します。
休みを入れる時のルールやヘルプの方法などの説明を受けましょう。
この辺はしっかりと確認した方が良いです。
例えば私の会社では、社内専用のスケジュール表を会社全体でオンラインで誰でも確認できるようにしていました。
「例えば来月はこのようなスケジュールで、ヘルプに入る人もネットで全社員が確認できますよ。」
などと、自信をもって説明できる薬局は安心です。
逆にスケジュール管理について、あやふやな説明しかできない薬局は、マイナスポイントが付きますね。
かかりつけ薬剤師の確認
そこの薬局がかかりつけ薬剤師の届け出をしているか?確認しましょう。(厚生局のHPを見れば誰でも確認できます)
もし、その薬局がかかりつけ薬剤師を届けているのなら、何人がかかりつけ薬剤師となっているのか?確認します。(人数までは厚生局のデータからは分かりません)
かかりつけ薬剤師の条件として、1年以上薬局に勤務していないとなれません。
かかりつけ薬剤師の人数が多いということは、それだけ長い期間同じ薬局に在籍しているということ。
すなわち、居心地が悪くないと判断できます。
逆に管理薬剤師のみがかかりつけ薬剤師で、他に誰も居ませんという場合は人の出入りが激しい可能性があります。
複数店舗を見学する
1つの店舗だけではなくて、複数の店舗を見学しましょう。
もし、配属予定ではない店舗でも自分が勤務可能な場所にある店舗は、全部見学させてもらいましょう。
薬局は、同じ会社でも雰囲気はまったく違います。
基本的にスタッフが少人数であるため、誰が居るかで空気は大きく変わります。
複数の薬局を見学して、ざっくりと大体の雰囲気を見ておくと良いでしょう。
もし配属先の薬局がどうしても合わない時に、移動が可能の店舗があれば精神的なセイフティーネットとして機能します。
各店舗の薬剤師のいうことは、それぞれ違うでしょう。
どれが正しいかは判断できませんが、参考として多くの情報を得ておくことは大切です。
まとめ
薬局見学で意識することは、以下の通りです。
薬局見学でスタッフの人柄を判断することはほぼ不可能であること。
見学時に大切なことは以下の通りであること。
これらのことを意識して、見学しましょう。
なお、私は多くの薬剤師を採用してきましたが、薬局見学をしない薬剤師も結構いました。
彼らは本部との条件交渉で納得した後は、特に薬局の見学を必要としませんでした。
見学をしてもあまり意味がないことを知っていたのでしょう。
そして、見学せずに入社しても何の問題もなく長く勤めてくれた人が多かったです。
(もちろん中には、早々に退職した人もいましたが、多くはその薬剤師自体に問題がありました)
以上、薬局見学についてお話しました。
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